当院では在宅診療も行っております。
在宅診療では基本患者さんの体調が悪化した際も家で対応することが原則ですが、家で在宅医が対応しきれない場合、付き添いの方にやむにやまれぬ事情がある場合など、やはり病院での治療をお願いしなければならないことがあります。
しかし病院へ短期間の入院をしようとしても、それが難しく家に帰されることがあります。
患者さんとその家族の期待に沿えない結果となることがあり、問題となっています。当然我々在宅医もがっかりします。
では病院が悪者なのか?何かいい方法はないのか?
解決するには双方がお互い話し合うのが一番です。
ということで昨日、在宅に関わる医療者と茅ヶ崎寒川のすべての病院代表者が集まり、会を催すこととなりました。
その名も「“ときどき入院、ほぼ在宅”を実現するには」。
私は今年の3月まではそのような患者さんを受け取る立場にいました。双方の事情を知るものとして今回この会の座長(要するに前に出て会の進行を司ったり、討論の取りまとめをしたりするお仕事)を仰せつかることとなりました。
といっても座長なんてやったことありません。会が収拾つかなくなったらどうしよ・・・
でも数日前に見込まれた参加者は20人ほどであったとのこともあり、まあそれなら何とかなるだろうと高をくくって当日会場入りすると・・・
まさかの100人越え・・・
座長席に座ると200個以上の眼からの視線を感じます・・・
でもこんなに多くの人に聞いてもらうチャンスもめったにないし、もう始まってしまったものは開き直るしかないっ!と、双方の立場にいた経験で感じたこと、よりよい環境にするための考えなど、今まで自分がずっと思っていたことを交えながらなんとか役をこなしました。
顔は笑っていますが心は引きつっています・・・
詳しく書くと長くなるのでかいつまみますが(いや、結局長くなっていますがw)、実は病院にもいろいろあり、それぞれで与えられる役割が違ってきます。
重症な患者さんを救命、治療する急性期病院と言われる大きな総合病院、リハビリを中心に行う回復型病院、慢性期の患者を診る療養型病院、認知症など精神的な病気の治療が得意な精神科病院などです(これらを組み合わせている病院もあります)。
ですがやはり医者や設備が整っているのは急性期病院で、多くの方がこういった病院での治療を希望されます。また夜は主に急性期病院しか救急車を受け入れられません(その他の病院には毎日24時間対応できる体制を作ることが難しいのです)。
ところが国は各病院を機能分化させるためにお金を誘導しており、急性期病院には慢性患者さんが長期入院をすると財政的に不利になるシステムを作り、命に係わる重症患者さんを集中的に診る施設に誘導しています。患者さんがこのような理由で急性期病院に殺到するとマンパワーの面に加え、財政面でも疲弊してしまう現状があるのです。
もちろんそのような状態のままでいい訳はありませんので、問題解決に近づくためにはその他の病床を有効活用することが大事になります。
それぞれの病院にはそれぞれの得意分野があり、病院や施設がお互い連携をとってスムーズに患者さんを託し、その病院が得意なことをするというのが大事なのではというのが私の考えです。適材適所というやつです。
今はその連携がまだ弱く、このつながりが今よりもしっかりした形になったら、困る患者や家族も減るだろうし、我々在宅医も安心して患者さんを病院に託すことができるようになると思うのです。
このような内容を各病院、在宅医と一緒にディスカッションしました。
この会で患者さんやそのご家族、寄り添う在宅医療者が病院のそのような実情を知り、病院側も普段はなかなか触れることのない在宅診療の実情を知ることができればいいなと思っていましたが、僭越ながら参加者から参考になった、ご満足頂いたという(お世辞でも)お褒めのお言葉を多くいただき、一応何とかサマになったかな・・・?と胸を撫でおろしています。
患者さん、ご家族が安心して家で過ごしていけることが在宅診療の一番の目標です。私でもまだまだやれることはありそうです。